団員インタビュー #2

酷暑継続中です。
セミも鳴いていない(暑すぎて鳴かないそうです)しーんとしている午後は
いつもと同じところを歩いていても、まるで違う場所のよう。
知らない町に迷い込んだような怖さと、そして灼けるような日差しに
恐ろしさまで感じてしまいます。

今回は、団員インタビューの第二弾♪
シティコーラス副団長 鷲見誠一先生です。
とってもとっても!有意義なお話を伺うことができました。

下の写真は、今年1月にグランシップで出演したオペラ
モーツァルト作曲『コジ・ファン・トゥッテ』のときのものだそうです。
問題:鷲見先生はどちらにいらっしゃるでしょうか?

答:前列右から2番目(ドン・アルフォンソ役)

おまけの問題:
前列の左から3番目のふくよかなメイド姿の方は、どなたでしょうか?
(ヒント)前回の定期演奏会では大変お世話になりました。
答はインタビューの後で…(*’ω’*)

こんにちは。音楽との出会いや、これまでの活動などについて教えてください。
 声楽を志されたのは、どんなきっかけだったのでしょうか?
私と音楽の出会いは、幼稚園児だったころに、両親が何の前触れもなく(笑)、アップライトピアノを自宅に用意してくれたことです。それをきっかけに、幼馴染の友達と一緒に近所の先生にレッスンに通うこととなりました。しかし草野球少年だった私は、全く練習しなかったため、初めて両手の曲を弾くことになったときには高い壁にぶつかり、ピアノを辞めそうになりました。しかし、横に陣取っていた母親の監視の元、私は、なんとかピアノを続けました(笑)。今となっては、そんな母親に感謝ですね。やはり大人になってみると、ピアノを弾くことができるということはとっても幸せなことであり、こればかりは、子どもの頃に習っておく必要があると思います。

ちなみに小学生の高学年では、クラス担任が「合唱命」の方で、それはそれは厳しく指導してくださいました。その先生の勧めだったのか、学校代表の合唱団に入るよう命じられ、これもやはり、あまり乗り気ではありませんでしたが、放課後の練習は、ボーイソプラノで歌っていた記憶があります。その練習の対価として、合唱団の子どもは、「のど飴」を学校に持って来て良いとされ、それだけが私のモチベーションだったかもしれません(笑)。

さて、中学生になると、私はテニス部に所属し、部活動が命の日々でしたが、一方でピアノにも熱が入り始め、その頃に与えられた、ショパンの『幻想即興曲』や『革命のエチュード』で、私の才能は開花しました(笑)。ピアノ教室の発表会では学校の女子も聴きに来てくれて、手前味噌ではありますが、私のファンクラブが校内で創設されたくらいでした。今振り返ってみると、私の人生のピークはあの頃だったかもしれません!

そこから、話は数年先に飛び、東京の音楽大学に入学してからが、声楽との出会いです。

ピアノ専攻を志していた私の手は、受験準備で自然の法則に反した練習をしたせいか、「職業性ジストニア」と呼ばれる状態になってしまい、特に右手の指が不随意に動いてしまうため上手く弾けなくなっており、入試では併願した音楽教育専攻に辛うじて合格した次第でした。

そこで出会ったのが声楽です(教育専攻はピアノと声楽が必修のため)。

学内の個人レッスンでは、イタリア、ドイツ、フランス、日本などのオペラアリアや歌曲を学び、それと同時に私が魅力を感じていたのが、学内外の演奏会のために(強制的に)駆り出されていた「合唱」です。

大学1年のときに、サントリーホールで、N響の公演でベートーヴェンの『ミサ・ソレニムス』を歌うことになったときは、本当にその曲の素晴らしさに引き込まれ、自宅で何時間もいろんなパートの音取りをし、もちろんソロパートも(勝手に)歌っていました。

この経験は本当に、私の音楽への視野を広げてくれました。

その後、やはり同様の理由から、同じくベートーヴェン『第9』、ブラームス『ドイツ・レクイエム』、ヴェルディ『レクイエム』、オルフ『カルミナ・ブラーナ』等、歌う経験を重ねるたびに、私は、合唱の魅力にのめり込み、それと同時にオペラやドイツリートの世界へ足を踏み入れていきました。

ソリストとして初めて歌ったのは、都内のオペラ団体の主催公演で、モーツァルト作曲のオペラ、『コジ・ファン・トゥッテ』のグリエルモ役です。オーケストラ付、全幕通しての出演という機会を頂いたことは、本当に幸せであり、良い糧となっています。

その後、いろんなオペラ公演や演奏会で歌う経験を重ねながら、リサイタルで自分の好きなドイツリート等を歌う活動も続け、現在に至ります。

-草野球少年!のど飴!ファンクラブ!…興味をそそられるキーワードが満載(*’ω’*)…
 しかし次に進まねば…
 えーと、鷲見先生が舞台で歌われるとき、
 いつも後ろから迫力を感じているのですが、どんな気持ちで臨まれますか?
 緊張、などはもうないのでしょうか?
舞台で歌うときに、特に何か心掛けるマインドとか、メソードはありません(笑)。というか、その準備段階で何をどのようにしてきたかが、ほとんど全てだからです。

強いて言うならば、「いい声を出そう」とか、「上手く歌おう」などと思わないようにすることでしょうか。良い意味で「無」になることが、私の経験上、一番良いと思います。本番の舞台上では、緊張はもちろんしますが、きちっと準備ができていれば、その緊張が障害になることはあまりありません。良くも悪くも、本番の舞台での演奏は、それまでに積み重ねてきたもののアウトプットでしかなく、舞台上で偶然起こるハプニングや逆に上手く歌えたりということは、たいして意味を持たないというのが私の考えです。

ただし、必要以上に緊張してうまく歌えない場があります。それが合唱団の練習時にソロを歌うときです(笑)。

単に、自分が「本番モード」になっていないから、ということもあると思いますが、それ以上に、ふだん、自分が指導している団員の方々の前で歌うということが何よりも、「いいところを見せなきゃ」とか「失敗したら恥ずかしいぞ」などの邪念が入りやすいのだと思います。よく、音大の教授が、「学生の前で歌うときが一番嫌だ」と言いますが、それと似たような感覚かもしれません。きっと「守り」に入ってしまうんでしょうね。そういう意味では、指導者と演奏者の両立ということは、なかなか大変なものがあります(笑)。

-「良い意味で『無』になる」…かっこいい…一度言ってみたい…
 こんなお話を伺ってしまったら、これからも後ろから凝視してしまいそうです(*’ω’*)
 これからのシティコーラスに望むこと、こんなことやってみたい、など
 お考えのことがありましたら教えてください。
現在は、コロナウィルス感染拡大防止の観点から、練習がお休みとなっていますが、出来れば御自宅で、カルミナの音取りや歌詞の朗読などを進めていただければと思います。

カルミナの合唱は私も歌ったことがありますが、一番大変なのは、歌詞の発音やリズム感を伴った掛け合いの部分ですね。(あとは、男声の高音がきつい・・・)

私の大学時代、歌の先生がよく、「(歌詞を)喋れれば歌えるんだよ。歌というのは、そのように出来ているのだから。」と仰っていました。特にカルミナのメロディーや音楽自体は素朴で単純なフレーズの繰り返しが多いため、前回のフォーレのレクイエムとは全く違うアプローチが必要かと思います。とにかく、今回は「言葉」です。

いざ、練習が再開されたときに、各自がこのトレーニングをしているかどうかによって、進度には大きな違いが出ると思います。

私自身のトレーニングとしては、モーツァルトなどのオペラに出てくる「レチタティーヴォ・セッコ」といって、劇を進めるために、簡単な和音進行の中で音程を付けて喋るという箇所があるのですが、それをたっぷり練習しています。特に、無理のない音域で、いろんな和音に乗せてイタリア語を話す(歌う)ということは、確実に、良い声のためのトレーニングになります。

もちろん、団員の方全てにこれを薦める訳ではありません。しかし、「発音」あるいは「歌詞をよく喋る」ということと、声の関係という点では、同じ練習であると思います。

カルミナに関しても、皆さん是非、音取りCDに合わせて歌うだけでなく、何回も歌詞を「喋って」から、歌うようにしてみてください。必ず歌いやすくなるはずです。

-よく外国語を覚えるときに、歌で覚えたりしますよね!それと同じでしょうか??(逆?)
 とにかく、今回は「言葉」なんですね!…わかりました!!(^^ゞ
コロナ禍においては、皆さん大変な生活を送っていらっしゃると思います。私も3月以降、個人事業としての仕事(演奏、合唱指導、個人レッスン、ピアノコンクール関係)は99%休止せざるを得ない状態が続いています。

ただ、幸いなことに、中学校と高等学校での非常勤講師としての音楽の授業があるため、何とか、切り抜けているといった状態です。今は、その授業準備、教材研究に丁寧に取り組み、特に2学期から中学校で始まる校内合唱コンクールに向けての授業を楽しみにしています。

今年度は中3を全7クラス、中2を2クラス担当していますので、計9曲の教材研究が必要です。特に3年生の曲はNコンの歴代の課題曲が多くを占めているため難易度も高く、それを、たった週1回の音楽の授業で効果的に指導するには、私自身が全てのパートを、暗譜で歌えるくらい熟知している必要があります。もちろん伴奏も練習しておきます。

何しろ、コロナの影響で時数は更に減り、しかもマスクがまだ外せないという環境下での授業です。生徒は「マスクを外して歌いたい!」って訴えてきますが・・・

高等学校では、1年生の音楽選択者を4クラス担当しています。こちらはそこまで無理してまで歌唱や合唱をすることもないのですが、ありがたいことに週2時間の時数が確保されており、鑑賞や器楽だけでは生徒の活動の量と質が確保されないので、合唱もやっています。学区が近いので、勤務している中学校を卒業した生徒を、また高校で教えるという、何とも嬉しい状況ですが、各中学校でしっかりと合唱の楽しみを体験してきた生徒たちは、マスクしていても、積極的に合唱の授業に取り組む生徒が多く、これまで彼等を指導してくださった先生方に感謝しながらの毎日です。

何事にも「感謝」の視点を持って毎日を過ごすって良いですね。無理やりピアノを習わせた母親に感謝、「ジストニア」になった自分の右手にも感謝、コロナ禍での休業要請にも感謝、密になりながらピアノの周りに集まって来る生徒たちにも感謝、そして支えてくれる家族、全ての方々に感謝です。

それでは、皆さん、年末まで練習が休みとなりましたが、健康に留意され、「今だからできること」に地道に取り組み、人生を豊かにしていきましょう。

-鷲見先生、お忙しい中ありがとうございました!
 練習再開時には、鷲見先生に「練習しましたね」と言っていただけるよう
 歌詞を「喋る」練習をしようと思います♪…練習の再開が楽しみです♬

 先ほどのメイド姿のお方は…オルガニストの市川善忠さんでした!